ケージサイズがウサギの行動に及ぼす影響について
      -U. 成熟ウサギを用いた検討 -

  ○田村 敏昌,山田 悟士,伊藤 隆,塩見 雅志(神戸大学医学部附属動物実験施設)

【目的】
 ケージサイズが幼齢ウサギの行動に及ぼす影響を平成9年度支部総会で報告した.今回は,成熟ウサギを用いてケージサイズがウサギの行動に及ぼす影響を検討した.

【材料と方法】
 実験に使用したケージのサイズは,従来ケージが350 mm (W) x 527 mm (D) x 350 mm (H)であり,神戸大で使用している大型ケージが550 mm (W) x 600 mm (D) x 450 mm (H)であった.ウサギは当施設で生産した12月齢のWHHLウサギ6匹(オス3匹,メス3匹)を用いた.ウサギのサイズは,体重3.33 ± 0.03 kg (mean ± SEM),頭胴長442 ± 3 mm,座位における頭高273 ± 3 mm,前駆伏臥後駆横臥のリラックス姿勢における臀部後肢先端長328 ± 5 mmであった.実験1では,ウサギを従来ケージから従来ケージあるいは大型ケージへ移動し,実験2では大型ケージから大型ケージあるいは従来ケージへ移動し,移動初日,1日後,および7日後に行動を観察した.ウサギの行動はビデオカメラで無人撮影し(13:00〜16:00),standing, grooming, walking, sitting, lying等について,回数および合計時間を調べた.給餌・給水,汚物処理は毎日朝9:00〜10:00に実施した.

【結果】
 実験1では,ケージサイズを大きくすることによって,groomingとsittingの回数と合計時間が増加傾向を示し,lyingの合計時間が減少する傾向を示した.また,大型ケージに移動したウサギの一部でstandingが認められた.実験2では,ケージサイズを小さくすることによって,grooming,sitting,walkingの回数と合計時間が減少し,lyingの合計時間が増加した.また,大型ケージで認められたstandingは従来ケージに収容することによって認められなくなった.

【結論】
 以上の結果より,幼齢ウサギと同様に,成熟ウサギにおいても従来サイズのケージでは行動が制限されており,大型ケージに変更することによって行動の制限が緩和されることが明らかとなった.