オートクレーブの滅菌異常早期発見の為の温度記録確認の必要性
○上野慎一1)、松田宏美1)、綾戸量1)、木村登1)、廣畑剛1)、岡本明2)、鍵山壮一朗2)、田島優2)、黒澤努2)
株式会社アスク1)大阪大学医学部附属動物実験施設2)
【目的】
大阪大学医学部附属動物実験施設ではSPF動物に滅菌器材を供給する為の大型オートクレーブが平成3年から稼動している。最近、滅菌温度と滅菌時間が設定値に達しないまま滅菌が完了している例が認められた。確認された異常とその後の対応について報告する。
【装置の整備と滅菌確認】
S社2重釜構造の大型オートクレーブを用い、滅菌条件121℃20分でケージ等の滅菌を行っている。装置の点検整備は年1回日本ボイラー協会の性能検査を受け、故障時は速やかなS社サービスマンの修理と整備を行ってきた。滅菌確認は滅菌テープの色調の変化で判断を行っていた。滅菌物の滅菌日や搬入先の記録は取っていなかった。
【確認された異常】
平成15年9月に滅菌温度異常による工程異常でオートクレーブが停止した。これは滅菌温度を感知している内筒温度調整用センサーが、123℃に設定されている外釜に接触した事が原因であった。過去の運転記録を点検したところ、滅菌工程が正常に完了していたものの中に、温度低下と圧力低下を示すものと温度低下は示すが圧力変化は示さないものがあった。
【対策】
内筒温度調整用センサーの位置調整後、以下の運転管理方法と滅菌器材の管理方法の変更を行った。1)運転完了時に滅菌テープの色調の変化を確認し、設定通りの滅菌温度の確認を滅菌温度記録で行い、供給可否の判定を行う。2)滅菌機材供給記録として滅菌日・搬入日・搬入先・滅菌物番号・機材名等のデータ保管を行う。
【まとめ】
機器の性能向上に伴って運転異常は殆ど起こらず、日常的確認作業は省略されがちである。今回発見された異常が汚染事故に結びついたか否かは検証されていないが、老朽化したオートクレーブでは温度低下・圧力低下は起こりうる現象であり、作業者による日常的確認作業と記録が特に重要であると思われた。