実験動物の輸送箱消毒におけるソフト酸化水の有用性
日本新薬株式会社 安全性研究部
中井伸子
実験動物飼育施設では、バリアー施設内へ新規に入荷した動物を搬入する時は、その輸送箱を消毒し、外部から有害な微生物の持ち込みを防止する必要がある。従来、輸送箱消毒では、ヨウ素系の殺菌洗浄剤ダイヤザン(伊勢化学工業、東京)を輸送箱に噴霧していたが、フィルターを通して噴霧した消毒薬が動物に接触する可能性があった。そこで、より安全性が高く殺菌効果も強いとされているソフト酸化水の殺菌効果ならびに輸送箱内部に薬液が到達しない噴霧条件について細菌モデルを用いてダイヤザンと比較し、その有用性を検討したので報告する。
1.試験管内で細菌に直接作用させた場合、ソフト酸化水、ダイヤザン500倍水溶液ともに、S. aureusおよびP. aeruginosaに対する殺菌時間はいずれも0.5分以内であった。しかし、0.5%有機物存在下では、前者は殺菌時間が延長し、後者は60分まで効果が認められなかった。B.subtilis芽胞に対しては、ソフト酸化水では5分で殺菌効果が認められたが、ダイヤザン500倍水溶液では60分まで効果がなく、0.5%有機物存在下ではいずれの薬剤においても60分まで殺菌効果が認められなかった。
2.汚染モデルを用いた噴霧実験では、ソフト酸化水ではS. aureusおよびP. aeruginosaともに噴霧後5分以内にすべての検体で菌が検出されなかったが、B. subtilis芽胞では、5分後は全て15分後では6/10検体から菌が検出された。ダイヤザン500倍水溶液は、P. aeruginosa では5分で菌が検出されなくなったが、S. aureusでは5分では全て、15分でも5/10検体より菌が検出され、またB. subtilis芽胞では15分後でも効果がなかった。
3.細菌を塗抹したメンブランフィルターをインジケーターとして、ソフト酸化水もしくはダイヤザン500倍水溶液を動物輸送箱に噴霧した場合の輸送箱内外の細菌への影響を調べた。ソフト酸化水、ダイヤザン500倍水溶液ともに、輸送箱より約20cmの距離から輸送箱フィルターに対して水平方向に噴霧した場合は、輸送箱外部の細菌はほ死滅したのに対して、輸送箱フィルター内部の細菌はいずれも無処置コントロールと同様に生存していた。一方、輸送箱フィルターに向けて垂直に噴霧した場合は、被験薬剤、輸送箱の内外にかかわらず細菌はすべて死滅し検出されなかった。