大規模動物実験施設用に構築した微生物モニタリングシステムと1年間のモニタリング成績

○林 貴代1)、桂 智映子1)、愛原 勝己1)鍵山壮一朗1)、廣畑 剛2)田島 優1)・黒澤 努1)

大阪大学医学部附属動物実験施設1)・株式会社アスク2)

【目的】
 大阪大学医学部附属動物実験施設の実験飼育室にはマウスが1室当たり約800ケージ収容されており、モニター期間中すべてのケージから毎週使用済み床敷きをおとり動物に入れるための人員を確保することができず、そのため省力化した当施設用の微生物モニタリングシステムを構築した。その微生物モニタリングシステムの成績と評価について報告する。

【微生物モニタリングシステム】
 検査にはおとり動物を供試した。おとり動物には、マウスICR(Crj:CD-1)、ラットWistar(Crj:Wistar)の各♀6週齢を使用し、飼育室導入後4週間目と6週間目の2回、収容ケージの約20%のケージから使用済み床敷と便(約1g)を採材し、おとり動物用ケージに投入し、8週目に検査した。微生物検査項目と頻度は、実中研の提案1),2)に準拠することとし、検査項目を年4回実施する基本項目と、年1回の確認項目に分類した。年3回は基本項目(血清反応T(実中研)、Intestinal Protozoa(IP)、Helminth、Pasteurella pneumotropica(P.p.)(自家検査))の検査を実施し、年1回は実中研におとり動物を輸送し、基本項目と確認項目(培養検査T)の検査を依頼した。P.p.については輸送前に自家検査も行った。

【結果】
 平成14年度の検査ではIP、P.p.、Helminthが検出された。IPの検査ではTritrichomonasChilomastix等が検出され、陽性率は安定して高い値を示した。P.p.の実験飼育室毎の陽性率は毎回低い値を示し、さらに検出されるラックの位置も検査毎に異なっていた。

【考察】
 IPは陽性率が高く、おとり動物の作製方法と検査法は適切であると思われたが、P.p. Helminthの陽性率は低く、おとり動物の作成法を工夫する必要があるかもしれない。

【参考文献】
 1)(社)実験動物中央研究所ICLASモニタリングセンター(実中研)):マウス・ラットの微生物検査項目と価格表(2002年4月1日)
 2)高倉 彰、2001. 特集−動物検疫の現状−、ICLASモニタリングセンターの微生物検査項目の見直し.
  アニテックスvol.12 No.4 P.157-161