感染事故時のブリーダーとユーザーの関係

森村 栄一 (日本チャールス・リバー株式会社 技術センター)

動物実験を取り巻く環境は時代とともに変化し、その時代の要求に応じた取り組みが成されてきました。
いつの時代においても実験動物の病原微生物統御は重要な課題として取り上げられ、学会や各研究会並
びに業界において真剣な検討が行なわれ、改善に努めてきました。

最近の我々を取り巻く社会環境の変化として、新興再興感染症対策として新しい法律が制定され、感染
症に対する新たな取り組みが加わりました。また、
TGM / KO動物の飼育および使用環境におけるさまざま
の問題から病原微生物統御について問題提起がされています。

実験動物における病原微生物統御は研究施設の動物実験施設ならびに実験動物生産業者施設におい
てハード・ソフトの両面からさまざまな取り組みが行われてきました。この取り組みの実態は感染事故との戦
いであったことは我々の共通の認識であると思います。


 「感染事故」となればいつも加害者と被害者の関係が先ず成立します。しかし、この関係が動物実験を行
なう環境において本当に求められる方向を示しているのでしょうか。

 現在の研究開発のフィールドは国際競争の真っ只中にあります。そして、「選択と集中」さらに、「スピード」
が求められ、一つも手を抜くことができない状況にあります。

 弊社では8年前のMycoplasmaと今回のPasteurella pneumotropicaと2回にわたり感染事故を起こ
してしまい研究者の皆様に多大のご迷惑をおかけしてしまいました。この現実を踏まえ「感染事故時
のブリーダーとユーザーの関係について」再考すべき点を取り上げることにより、研究活動と研究支
援としての実験動物供給において各々が果たすべき役割を考えるきっかけになればと考えておりま
す。