生産施設実験動物から分離されたPasteurella pneumotropica様細菌の特徴
田島優、鍵山壮一朗、桂智映子、愛原勝巳、加藤貴史、大洞嗣子、黒澤 努
大阪大学医学部 附属動物実験施設
【目的】
Pasteurella pneumotropica(P.p)は実験用マウスやラットの日和見感染菌といわれている。これまで本菌の感染症に関する報告は少ないため、その特性が十分理解されていない。最近、実験動物生産施設で本菌に類似した細菌による汚染事故が発生した。当施設でもこのコロニー由来動物から菌を分離し遺伝子解析を行ったので報告する。
【方法】
本菌の分離・増菌培養にはチョコレート寒天培地を用いた。標準株としてATCC1366、ATCC12555、ATCC35149、N8株、分離株として生産施設提供株2株、当施設で分離した2株を用いた。従来からの同定法である、Gram染色、5%ヒツジ血液寒天培地を用いた栄養要求溶血試験、市販キットによる生化学試験を行った。遺伝子解析は16SrRNA特異プライマー(Wangら1996,Nozuら1999,Kodjoら1999,Bootzら19998)を用いたPCRと、Pasteurella科に特異的なプライマーで増幅されたDNAを用いた16SrRNAの一部の塩基配列(494bp)の決定、Randomly
Amplified Polymorphic DNA( RAPD)を行った。
【結果】
マウスからの分離株は特異プライマーに対する反応が標準株と異なるものがあったが、16SrRNAの塩基配列やRAPDパターンが類似した。当施設の判定基準であるコロニー形状やGram染色による菌の形態、ヒツジ血液寒天培地での発育状況、生化学試験の結果は標準株と同じであった。一方、ラットからの分離株は、特異プライマーに対する反応はマウスからの分離株と同様の結果を示したが、16SrRNAの一部の塩基配列は標準株と2%以上の相違があり、RAPDパターンも標準株や分離株の中に類似する菌株はなかった。また、血液寒天培地での発育ではB溶血を示し、標準株や分離株とは異なっていた。
【まとめ】
マウスからの分離株はP.pである可能性が高く、ラットからの分離株はこれまで知られているP.pと異なるバイオタイプであると思われた。