実験動物飼育室におけるハイポックウォーター(弱酸性水)の殺菌・消毒及び、消臭効果について

小郷 哲、北 徳、生和 幸子、下村 都、人見 貞江  1杉原 直佳、1有本 哲也

川崎医科大学 医用生物センター  1)高塚薬品株式会社

実験動物飼育施設で用いる殺菌・消毒薬は、実験動物及び人に安全性が高く、なおかつ殺菌・消毒効果の有効なものが求められる。我々は最近話題の弱酸性水ハイポックウォーター(以下HW)の殺菌・消毒効果及び、消臭効果について検討したので報告する。

方法:1HW塩素濃度経時変化試験
50ppmHW10ccを蓋付きサンプル瓶に分注密閉し、室温(20-25℃)、冷蔵庫(4℃)及び、孵卵器(38)℃内に遮光静置し測定した。
50ppmHW20ccを試験管に分注、飼育室環境(動物不在)に開放、非遮光で静置し測定した。

結果:
冷蔵庫及び、室温、遮光・密閉では、塩素濃度50ppmが少なくとも約半年間維持された。また、孵卵器内、遮光・密閉では11週までは50ppmが維持され、12週から約40ppmに下がった。一方、室温、非遮光・開放の場合は、一週後から8週までは約40ppmが維持されたが、その後は不安定で、半年後に10-0ppmに下がった。

方法:2) ウサギ・ラット飼育室床HW散布前・後の殺菌効果比較試験
ウサギ、ラット室清掃作業前に、拭き取り検査キット『Pro-media ST-25.感ルメックス』にて検体採取・清掃作業後床水洗、水掻き・乾燥、検体採取・清掃作業後HWで床洗浄、10分間放置後、水掻き・乾燥、検体採取

結果:
ウサギ、ラット飼育室にてHW床洗浄の結果、飼育室床生菌数は著しく減少した。しかし、飼育室床水洗浄においても、HW同等に生菌数が減少する事が判明した。また、飼育室内清掃作業に用いるドライワイパーなどの清掃用具が想像以上に汚染されており、雑菌の温床になっていた事が判明した。

方法:3) 簡易アイソレーター内HW噴霧前・後の落下細菌殺菌効果試験
a)簡易アイソレーター内HW噴霧前・後の落下細菌数比較。b)マウス飼育中の簡易アイソレーター内で5日間に渡って1日1回、噴霧前・HW60分噴霧後の落下細菌数比較。
a、b試験とも検体採取には、『ぺたんチェックR25 PT1025・栄研器材梶xを用い、孵卵器37℃で24時間培養、コロニー数をカウントした。

結果:a)HW噴霧前アイソレーター内落下細菌コロニー数は、25cm2中13〜27個(4P)であったが、噴霧(約60ml) 30分後で、0〜2個(4P)に激減、1時間後(約110ml噴霧)では0〜0(4P)で細菌コロニーは全く確認されなかった。 b)HW噴霧前・後のコロニー数は、1日;前39-56・後2-4、2日;前57-88・後3-7、3日;前43-151・後6-7、4日;前141-190・後3-8、5日;前168-196・後2-9で、HWの殺菌効果が顕著に表れた。今回、HWの殺菌・消毒効果試験を行った結果、実験動物施設で用いる有効な殺菌・消毒薬であると判断された。


方法:4)主観判断によるHW消臭効果試験 試験遂行中につき当日発表します。