糖尿病マウスにおける腎膿瘍からのプロテウス菌の分離について
○木村 理絵、木下 亮一、住川 守男、千葉 薫 (鰍iTクリエイティブサービス)
【はじめに】米国から入手した糖尿病モデルマウス(C57BLKS/J-m+/+Leprdb)において,実験処置が施される以前に斃死する例が散発してみられたため,これらを剖検した処,その何例かに腎臓の膿瘍を主徴とする所見が認められた。そこで今回我々は,これらの膿瘍から釣菌,培養しその感染菌の同定を行うとともに,本系統における死亡例と腎膿瘍発症の関連性を調査し,その感染原因について若干の検討を試みたので報告する。
【材料および方法】
1.環境条件 1)飼育室 :コンベンショナル(肥満,糖尿病モデルを収容)
2.動物 C57BLKS/J-m+/+Leprdb, ♂(Jackson Laboratories)
3.飼育条件 1)ケージ :クリーン(282×451×157, 日本クレア社製)
2)床敷 :α‐dri.(Shepherd Specialty Papers, Inc.)
3)飼育密度 :7〜10匹/ケージ
4)飼料,飲水:CRF-1(オリエンタル酵母社製),紫外線殺菌水
4.飼育管理 1)ケージ交換:週に2回,床敷とともに滅菌済みのものに交換
5.検査器具 1)培地 血液寒天培地(ニッスイ), DHL寒天培地(栄研化学)
2)同定キット バイオテスト1号, バイオテスト2号(栄研化学)
6.検査方法
1)腎膿瘍から釣菌し,血液寒天培地に画線,37℃,48時間培養した。
2)培地上のコロニーの形態学的観察後,これらをスライドグラス上に
塗抹し,グラム染色した後に顕微鏡による形態学的観察を行った。
3)OF試験により糖の酸化,醗酵を確認した。
4)バイオテスト1号または2号により同定を行った。
【結果】本系統における斃死個体の内,腎膿瘍の認められた20例の患部から釣菌,培養した結果,その内の14例(70.0%)からプロテウス菌(Proteusmirabilis)が,さらに4例(20.0%)からクレブシエラ菌(Klebsiella oxytoca)が分離された。また,本系統120匹の39週齢時の死亡率は16.7%(20/120)であり,これらの死亡例の中で,腎膿瘍は17週齢以降にみられ,全死亡例の50.0%(10/20)を占めた。