パーポスブレッドドッグにおける狂犬病ワクチン接種のあり方 −ナルクでの今後の対応−


               潟iルク
              丸山 みゆき

 ペット用輸入コウモリの狂犬病保有や、昨年末のボリビアでの輸入の感染ハムスターの飼い主咬傷事件(発病者なし)、外国船によるペット犬の不法上陸などがニュースになった。狂犬病清浄国の我国といえども、一般的には必ずしも安穏とはしていられない状況にある。
 一方、現在わが国の実験動物や動物実験分野におけるパーポスブレッドドッグ(Purpose-bred Dogs、動物実験として生産されたイヌ)では、狂犬病の感染自体は全く問題にならない。しかし、狂犬病予防法、即ちワクチン接種や登録の問題は、平成13年4月より施行の情報公開法と無関係ではない。国公立研究機関は、実験動物や動物実験に関する開示請求を受けていると言われ、本問題も例外ではないようである。
 実験用のイヌは、ランダムソースドッグ(Random-source Dogs、譲渡犬など)とパーポスブレッドドッグとに大別され、ここでは後者のブリーダの立場から、狂犬病予防法との関係を論じてみたい。
 国内生産の実験用のイヌは、ワクチン接種や登録への対応が必ずしも一様ではないようである。これにはいくつかの理由がある。その基本には、昭和27年の山形県の質問に対する厚生省見解にもあるように、科学的目的に供すること、がある。地方自治体当局の指導もこれを基に、他のイヌとの接触のない施設での実験研究に供するイヌについては特例と解釈されていた。狂犬病予防法自体、もともと終戦直後の狂犬病蔓延の制圧を意図したもので、研究施設の実験研究用のイヌは想定外と思われる。さらに、ブリーダ側には、実験研究用として納入するイヌについて、ワクチン接種や登録の必要性を判断できる情報が殆ど無く、またその立場にない。
 しかしナルクとしては、今後は狂犬病予防法をより一層遵守し全頭接種を前提に、ユーザの使用目的情報の入手に努め、接種の吟味を行う予定である。
 具体的には、接種については、@受注ごとにユーザに対しワクチン接種の要不要を確認 A接種する場合はワクチン接種とともに証明書を発行。登録についても、@登録の必要性をユーザに確認 A要望があれば登録後納入 などの対応を考えている。
 ただし、この方法にも次のような問題点が残る。現在の受注体制では、91日齢を経過した日から30日以内のワクチン接種は難しい。また、ワクチン接種後の納入には一定期間が必要となり、急な注文に対応しにくくなる。逆に、ある一定の月齢(3〜4ヶ月齢)で一斉にワクチン接種するとなると、ワクチン接種が研究に支障を及ぼす場合に対応できなくなってしまう、当然接種費用も発生してしまう、などである。
 これを機会に、様々な問題点をユーザと検討する傍ら、サイエンスに貢献する実験動物としてのイヌへのワクチン接種や登録について広く議論されることを望みたい。