動物飼育・実験の信頼性保証における技術者の役割
日本QA研究会 監事、第一製薬 信頼性保証部
橋爪 武司
GLP制定の目的は、新医薬品の承認申請等の際に添付される動物実験データ等の信頼性をより一層高めるため、「ハード、ソフトの両面から試験実施上の遵守基準を定める」ものである。
厚生労働省令では安全性試験の信頼性確保のために、ハード面として、@試験施設の職員及び組織、A試験の適正実施、信頼性確保のための社内調査、B試験操作等の標準化、C被験物資及び対照物質の取り扱い、D試験計画の立案、実施、E試験の報告及び記録等の保存、ハード面として、@試験施設内の各種施設の構造、広さ、配置等、A試験データの収集、測定又は解析に使用される機器及び施設の環境制御に使用される機器等、についての規定を求めている。
GLPの組織図では、GLP組織と会社組織の関係、GLP上の役割分担・責任体制が明確であることが必要であり、運営管理者からの指示が末端まで速やかに伝達され、かつ予期せぬ出来事等について速やかに運営管理者、試験責任者、主管する責任者に報告される組織である必要がある。
信頼性保証部門(QAU)による施設・試験調査の目的は、調査を通して試験の信頼性を確認し、保証することにあり、@信頼性、A安全性、B効率性、C倫理性、をそれぞれ高めることである。試験の信頼性を確保し、保証するためには、運営管理者、試験責任者、QAU責任者だけでなくGLP職員全員の協力と連携が不可欠であり、たとえ一人でも問題となる職員がいるだけで、その施設・試験の信頼性を損なうことに繋がる。
「動物飼育・実験の信頼性保証における技術者の役割」と題して、試験責任者・試験従事者、実験者・実験補助者、動物飼育担当者(自社子会社、派遣会社、メンテナンス会社等)等の方々の職員としての権利・義務と役割・責任についてその概要を説明する。試験・作業の適正実施とその記録、GLP適合の動物飼育施設、標準操作手順書(SOP)の整備と管理、生データの取り扱い、QC(品質管理)&QA(信頼性保証)とは、予期せぬ出来事・異常発生時の対応等について、信頼性確保・保証の角度からみた留意点、犯しやすい人為ミスやそれに対する対応・防止策、信頼性保証部門の立場からのメッセージについて紹介する。
また、医薬品機構によるGLP適合性(実地)調査での「文書による指導事項」並びに医薬品GLP解説及び医薬品GLPガイドブックに記載のGLPに関するQ&A(質疑応答集)について紹介する。